トップページギリシア文字>クシャン朝貨幣6

資料名クシャン朝貨幣6 クシャン朝の王、ウィマ・カドフィセス(在位は一説に紀元後120-143年)発行の銅貨。 田辺勝美編(1992)『平山コレクション シルクロードのコイン』講談社の175頁の164に 同種の銅貨の鮮明な写真があり参考にした。

■表は王の立像。周囲にギリシア文字で書いたギリシア語の銘文がある。 1時の位置より時計回りにbasileys(王)、basileōn(諸王の)、sōtēr(救済者)、megas(大いなる)、 ooēmokadphisēs(ウィマ・カドフィセス)とあり、全体で『諸王の王。偉大なる救済者。 ウィマ・カドフィセス。』ともなろうか。なお、属格(〜の)の王名を用いるのはアレクサンドロスの貨幣以来の伝統であるが、それは見られない。

■裏は牛と神の立像。周囲にカローシュティー文字で書いたガンダーラ語の銘文がある。1時の位置より反時計回りにmaharajasa(大王の)、rajadirajasa(諸王の)、sarva(全)loga(世界)、【i】śvarasa(支配者の)、mahiśvarasa(大地の主の)、v'imakathpiśasa(ウィマ・カドフィセスの。 ウィマのウはv'【=vの上にacute accent】と翻字されるカローシュティー文字で発音は[w])、?【tratara】(救済者)とあり、全体で『諸王の王、全世界の支配者、大地の主たる救済者。ウィマ・カドフィセスの。』ともなろうか。 アレクサンドロスの貨幣以来の伝統に従い王名は属格(〜の)となっている。各語に付された-saは属格語尾。 銘文最後の部分は見えない。田辺勝美編(1992)によるとtratara(救済者)とあるが、本貨幣には3文字分のスペースは無いように見える。 そこで「?」としておいた。
 なお、田辺勝美編(1992)によると四番目の語彙はiśvara(Skt.īśvara支配者)であること明らかであるが、 ここに紹介した貨幣には「i」がなくśvaraとなっている。このことより、この貨幣は贋作である可能性があると言わざるをえない。
(吉池孝一 2019.9.3)
資料記号gi2k20
文字/言語表:ギリシア文字/ギリシア語
裏:カローシュティー文字/ガンダーラ語
材質/形態銅/円形コイン
重さ16.48g
大きさ最大径29.5mm、厚さ:3mm
管理/所蔵古代文字資料館/個人蔵

ギリシア文字(表)  カローシュティー文字(裏)